THE FIRST SLAM DUNKを3回観た

 好きになったきっかけを思い出せない作品のひとつがスラムダンクだ。年代的には少し上で大ブームを巻き起こした作品で、兄がいるがあまりスポーツ漫画に興味があるタイプではなかったので影響としてはほぼ皆無である。

 いつ興味を持って、いつ好きになったのかまるで思い出せない。それでも出会いはあったのだろう。ふとした瞬間、帰り道の交差点で声をかけてくれた誰かがいたのかいないのか分からないが、何だか猛烈に好きになって中学生の時に完全版24巻を毎月の小遣いをはたいて地道に集めた。

 ブックオフに中古本が並んでいる中、どうしても新しい一冊が欲しいと書店に向かったことは鮮明に覚えている。そのあともたくさんの漫画にハマって買って、時には手放した作品もあるが、スラダンは今も本棚のスタメンの位置にいる。何度読んでも、何度も同じところで泣いて、はじめて感動する場面もある。

 

 そのスラムダンクが、映画化された。(以下、映画のネタバレもあるのでご自衛ください)

 

 公開前、声優交代やプロモーションの面で炎上していたこともあり映画館で観賞することには消極的であった。

 2022年12月の水曜日。公開日から確か、二週間ほど経過した頃だっただろう。一つの用事を済ませる『ついで』という形でTHE FIRST SLAM DUNKを観賞した。言ってしまえば休日の時間潰し。そんなつもりでしかなかった。

 開始冒頭から引き込まれ、過不足のない展開に息を飲み、気づけばマスクが涙で濡れて使いものにならなくなっていた。漫画で読んでいたスラムダンクの一人一人が、スクリーンの中に間違いなく生きて、呼吸をしている。

 

 話は遡るが、漫画の最後で宮城がキャプテンになる展開がある。読んでいる時に「いやそれは無理だろ」と、何というか宮城というキャラクターに重きを置いていなかった。

 流川のようにスター性はなく、桜木や赤木のようなフィジカルもない。スタミナ面では難があるが、3Pと天性のセンスを持ち合わせる三井にも――正直に言うと、劣る、と思っていた。

 思っていたが、映画を最後まで見て、ああ、宮城こそがキャプテンなんだと完膚なきまでに納得させられていた。家族の過去はあるが、それも関係なく、チーム全体の流れを引き寄せ、一人一人がコートの上でどう活きるかを把握した上で的確に指示を出すことができるのはキャプテンの素質があるからだ。

 だというのに、宮城リョータはプレッシャーに弱い。大事な試合の前に一人トイレに籠って吐いてしまいそうなほどに。虚勢を張って、強がって、心臓ばくばくなことを必死に隠す。

 

 

 は~~~~~~~~~~~~もう無理………………何なの????????????

 

 一回目、ついでで観て号泣して、二回目を友人と観た。三回目をIMAXで観てもうとにかく!!!リョータの顔が!!!!!!!いいんですよ!!!!!!!!!!

 

 主役がリョータにはなっているし、確かにそうなんだけどリョータを主軸に描かれる湘北メンバーがまた良いことでしてね……確かにそれぞれの関係性において、原作にあったからこそ活きるエピソードがなくなった物足りなさもあるけれども、映画の尺で収めるなら納得の展開しかない。そもそも原作の井上先生が脚本を書いているので圧倒的信頼の上に成り立っているので、齟齬がない。

 あと三井さんの乱闘はコンプライアンス的に問題が起きる的なツイートを読んで激しく納得した。いやそもそもだいぶソフトにはなってるけどあのヤンキー感に令和は付いてこれてるのかしら……?

 自分に落ちてくる雪のことを『ゴミ』だと思ったのか、地面に倒れている自分のことを『ゴミ』だと揶揄したのか、そのあたりもリョータお前本当好きってなってちょっと記憶が朧げ。

 

 あとこれは観る年齢にもよると思うんだけれども、リョータのお母さん(カオルさん)がソータくんの荷物を片付けようとしてリョータを跳ね飛ばすシーンは、何というか、感情と理屈がかみ合ってないジレンマに息を詰めてしまった。突然息子を亡くしたカオルさんも、突然兄を亡くしたリョータも、どちらもつらくて、でも部屋にあったお面を被ってバスケットへの夢を馳せることができるリョータと、現実と向き合い続けるカオルさんとでは突きつけられている事実が違うんだなと痛感する。リョータがバイク事故に遭った時のカオルさんの心境を考えたら普通にしんどい。

 それでも、誕生日にホールケーキを買って、録画しているホームビデオにはソータとリョータが同じように映って思わず笑うカオルさんには幸せになって欲しい。手紙を書き直すリョータも、その手紙を読むシーンも観る度に泣いてしまう。

 

 湘北メンバーのやり取りも漫画で読んだ(見た)シーンがリアルに再現されてたり、より深く描かれていたりで瞬きすら惜しくなるほどだった。このあたり、原作の井上さんの「ここはファンが観たいだろう」というニーズをきちんと把握していてさすがだなと思った。それにしても流川のまつ毛がマジで長い。念を送ったり、込められたり、端っこでドタバタと漫画と同じように動く花道とてもかわいい。体力オバケ。

 魚住さん、赤木へ声をかけることはなかったけれども観客席の前の方にきたり、もとの座席に戻って立ち上がったりとめちゃくちゃ目立っていて笑った。3回目でようやく海南メンバーを確認したが、思っていた以上に映っていた。牧さんどころではなくみんないた。あとジャージの色的に恐らく翔陽がいたような……?

 

 漫画の中で飄々としている宮城が背負っている重さに、見ているこちら側が押しつぶされそうになりながら、でもバスケットがある、ソーちゃんにもらった言葉が、リストバンドがある、と自分を奮い立たせるリョータが眩しい。その眩しさに呼応する赤木、三井、流川、花道、そして木暮くん、ベンチメンバーが眩しい。映画でも謎のTシャツを着てて笑いました木暮くん。

 円陣を組んで指示を出すリョータにキャプテンの資質を見出して掛け声はお前がするべきだって示す赤木キャプテン。ブランクがあるため体力が追い付かなくてふらふらになっても、リョータからのパスを受けて得点を取る三井の勝利への執念を存分に感じた。炎の男だよ。かっこいい。旗を揚げたい。流川と花道はいつまでも反発し合いながら相手を尊敬する仲であって、将来的にプレーする場所が違ってもリョータが取り持つんだと思うとキャプテンなんだなとしみじみする。(いやまさかリョータが渡米するとは思わなくて1回目観た時には座席でひっくり返ったけど)

 

 映画を観ている最中、まさに一挙手一投足、見逃せなかった。

 わずかな表情の変化すら目を奪われて、これは落ちる――――落ちた、と思ったが、リョータって彩ちゃん好きなんですよね!!!!!!!!!!!だいぶ前から知ってる!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 手のひらにNo.1 ガードって書かれて、アメリカの試合でも手のひら見てるリョータ!!!!!!ちゃんと付き合ってるの?!?!?!?!?大丈夫!?!??!?!ってなってなんかもういろいろ情緒不安定。

 

 原作で幼少期が描かれてるのって確か山王の沢北だけだったと思うんですよね……映画でも足りない経験の『敗北』を味わって泣き崩れるところめちゃくちゃ高校生らしくて好きだし、それでもアメリカ行く沢北さすがだわって圧倒されて、リョータ出てきてエンディング、座ってるのに倒れそうだった。

 人気なキャラクターをもっと好きにさせる井上先生すごすぎて語彙力がとっくにない。コートに置いて忘れた。

 

 

 

 本当にすごい映画でした。好きだから、というフィルターがかかっているにしても、こんなにも心臓がばくばくした映画は久しぶりでした。

 っていうか志摩さんと宮城リョータって同じぐらいの身長なんですよ、知ってました?(?)

 公式が圧倒的正義のためリョータに恋した瞬間失恋確定でつらいので、木暮くんに励ましてもらいたいと思います。あと5回ぐらい映画館で観たい。